今回は、各地の寺社境内で売られていた郷土玩具や民芸品、奉納品などを集めた『寺社境内名物集』です。
この書籍を誰が、いつ、どこで作ったのかは分かっていません。年代も「1800年代」とされているだけで、詳しいことは不明です。けれども、そこに描かれているものを見ていると、当時の人たちが寺社へ参拝したとき、どんなものを手に取り、何を願っていたのかが少しだけ見えてくるようです。
子供の頃、寺社仏閣そのものにはあまり興味がありませんでした。まあ、あんまり渋い趣味の子はいなかったと思うけど。境内で売られているこのような郷土玩具も、意識して見た記憶はほとんどありません。
玩具として覚えているのは、竹で作られた蛇です。手に持つとクネクネと本物の蛇のように動く、竹蛇と呼ばれているもの。あれは子供心にも不思議で、ヘビそのものは嫌いですが、でも面白いものでした。
寺社境内で売られていた郷土玩具は、単なる子供のおもちゃというより、参拝土産であり、縁起物であり、ときには信仰の対象だったようです。
無病息災、家内安全、子育て、厄除け。
小さな人形や鳥、動物のかたちに、そうした願いが込められていたものが多くあります。
境内の玩具は、ただの土産物ではなかった
たとえば「鷽替(うそかえ)」の鷽。
これは木彫りの鳥「鷽」を模した縁起物で、前年に知らず知らずのうちについた嘘や災いを、天神さまの誠の心に取り替えるという神事に由来するそうです。凶を吉に取り替える、という意味も重ねられています。太宰府天満宮や湯島天神など、天神信仰と結びついた行事として知られています。

017 亀戸天神のうそ 
059 筑前太宰府天神鷽会の鷽 
060 筑紫の鷽替/東都亀戸のうそ 
061 鷽替の由来畧伝
ミミズクも、縁起の良い鳥として扱われてきました。
「不苦労」、つまり苦労しない。「福老」、豊かに老いる。そうした語呂合わせから、福を呼ぶものとされていたのでしょう。

035 京都製練物木兎 
042 尾花製木兎
弾き猿、またははじき猿と呼ばれる玩具もあります。
竹のしなりを使って猿を弾き上げる仕掛け玩具で、「災厄を弾き去る」「病魔を弾き去る」という言葉遊びと結びつき、縁起物として親しまれてきたものです。日本玩具博物館でも、日本各地に伝わる玩具として紹介されています。
この信州のものは、猿ではなくネズミとよばれています。
なぜネズミなのかはよく分かりません。もしかすると、ネズミ除けの意味があったのかもしれませんし、土地ごとの言い伝えや洒落があったのかもしれません。
こういう語呂合わせは、縁起物には本当に多いですね。
少し強引なものもありますが、その強引さも含めて、人の願いがそのまま形になっている感じがします。
素朴なものに惹かれる理由
これらの郷土玩具は、紙、竹、木、粘土など、身近な素材で作られています。
きれいに整いすぎているわけではありません。
少し歪んでいたり、顔がとぼけていたり、作りが簡単に見えたりするものもあります。けれど、そこに素朴な味わいがあって、とても惹かれます。
土偶やアフリカの仮面にも、同じような魅力を感じます。
小賢しさや、技巧を見せようとする感じを吹き飛ばしてしまうような、まっすぐな強さがあります。上手いとか下手とかいう前に、何かがそのまま立ち上がっている。
透明な心を持っている。
そんなふうに言いたくなるものがあります。(デザイン)カッコ付けただけのデザインが嫌いな私です。
なので、この『寺社境内名物集』に惹かれたのかもしれません。
そこに並んでいるのは、ただの古い玩具ではなく、人が何かを願い、怖れ、祈りを込めた小さなかたちなのだと思います。
『寺社境内名物集』,[製作者不明],[18–]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2533378 (参照 2026-04-29)より四隅の汚れを削除して加工
構成・Chat GPT








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