不思議な図像が並ぶ『天帝尊星霊符秘密集伝 一名・国乃宝』

藤崎孝教 著『天帝尊星霊符秘密集伝 : 一名・国乃宝』,天皇館,明43.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/760924 (参照 2026-08-26)を加工。

漢字のようで、漢字ではない。文字から枝が伸びたようなもの、顔や目のように見えるもの、点を線で結んだ星座のようなもの。『天帝尊星霊符秘密集伝 一名・国乃宝』を見ていると、ページをめくるたびに不思議な図形が現れます。霊符や護符について、ほとんど知識がありません。この分野に興味を持ったきっかけも、信仰や呪術への関心というより、まずは霊符そのものが持つ独特なイメージでした。漢字から派生したような図形があるかと思えば、ところどころに漢字らしきものが入り、顔に見えるもの、目のような形を持つもの、星や点を結んだようなものまであります。何を表しているのか分からなくても、見ているうちに「これは何なのだろう」と気になってしまいます。
今回は、そんな霊符を多数収録した明治時代の書籍『天帝尊星霊符秘密集伝 一名・国乃宝』を紹介します。なお、道教・霊符・護符について専門的な知見を持っていません。以下の背景説明については、資料や一般的な研究情報をもとにChatGPTで整理したものです。霊符の効験を保証したり、信仰上の正しさを論じたりすることが目的ではなく、古い資料に残された図像や文化を知るための紹介としてお読みください。

そもそも道教とは

霊符について調べていくと、よく目にするのが「道教」という言葉です。
道教は中国で成立し、神仙思想や民間信仰、老子・荘子の思想、陰陽五行、占星術など、さまざまな要素を取り込みながら発展してきた宗教です。
不老長生や厄除け、病気平癒、招福など、人の暮らしに近い願いとも深く結びついており、星や方位、山岳、神々なども重要な意味を持っています。

今回紹介する『天帝尊星霊符秘密集伝』にも、星、方位、五行、神々、病気、災難、家内安全、商売、縁など、日常生活と結びついた題材が数多く登場します。
日本では、中国の道教がそのまま一つの宗教として広く定着したというより、その思想や信仰、術の一部が陰陽道や修験道、民間信仰などに取り入れられ、日本独自の形へ変化していきました。
その影響は、現在も続く年中行事や習慣の中にも見ることができます。
たとえば、お中元の「中元」という言葉は、中国の道教における「上元・中元・下元」という三元の考え方に由来します。日本では仏教のお盆の時期とも結びつき、現在では日頃お世話になった人へ贈り物をする習慣として定着しています。

谷文晁 [画] ほか『文晁遺芳』,便利堂,昭13. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/8311574 (参照 2026-08-27)を加工


一方、日本の年中行事の多くは、「これは道教」「これは神道」と単純に分けられるものではありません。
中国から伝わった思想や風習が、日本古来の信仰や神道、仏教などと重なり、長い時間をかけて現在の形になったものが少なくありません。
節分には、季節の変わり目に邪気を祓うという考え方があります。中国から伝わった追儺の風習や陰陽五行の思想などと、日本の厄除けの信仰が重なり、現在の豆まきなどへつながっていきました。
ひな祭りも、中国から伝わった上巳の節句と、日本にあった人形に穢れを移して流す風習などが結びついたものです。現在の華やかな雛人形とは印象が違いますが、もともとは厄を祓い、子どもの無事や成長を願う意味を持っていました。
七夕は、中国の牽牛・織女の伝説や乞巧奠(きっこうでん)と、日本に古くからあった棚機(たなばた)の信仰などが重なって成立したとされています。星に願いを託すという現在の七夕にも、中国から伝わった星にまつわる文化の影響を見ることができます。
端午の節句も、中国から伝わった五月の厄除けの風習が日本で変化したものです。菖蒲などを使って邪気を避ける習慣が広まり、のちに男児の健やかな成長を願う行事として定着していきました。
お月見・十五夜も、中国の中秋節など月を愛でる文化の影響を受けながら、日本の収穫への感謝や月にまつわる信仰と結びついてきました。
月や星を特別な存在として見る感覚は、『天帝尊星霊符秘密集伝』に多く登場する星の霊符を眺めていると、どこか通じるものを感じます。
一方、お彼岸は仏教との関係が深い行事です。「彼岸」という言葉自体が仏教に由来し、日本では春分・秋分の時期に先祖を供養する習慣として定着しました。日本古来の祖先を敬う感覚とも重なりながら、現在の形になったと考えられています。
お盆も、仏教の盂蘭盆会を中心としながら、日本に古くからあった祖先の霊を迎える信仰と結びついた行事です。迎え火や送り火、盆踊りなど、地域によってさまざまな形が残っています。
このように見ていくと、私たちが普段何気なく行っている季節の行事には、中国から伝わった思想や風習、道教、仏教、神道、民間信仰など、さまざまな要素が入り込んでいます。

どれか一つを起源と決めてしまうより、異なる文化や信仰が日本の中で混ざり合いながら、少しずつ形を変えてきたと考えたほうが自然だと思います。
そう考えると、今回紹介する霊符も、まったく別世界のものではなく、中国から伝わった思想や信仰が日本で受け入れられてきた流れの中にあるものとして見ることができます。

霊符とは

藤崎孝教 著『天帝尊星霊符秘密集伝 : 一名・国乃宝』,天皇館,明43.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/760924 (参照 2026-08-26)を加工。

「霊符」と聞いて、まず思い浮かべるのはお札のようなものかもしれません。
道教では「符」「符籙」などと呼ばれる、特殊な文字や図形を記したものが用いられてきました。神霊への働きかけ、厄除け、病気平癒、招福など、目的に応じてさまざまな符が存在します。
日本でも、中国由来の符の文化が陰陽道や修験道、民間信仰などと混ざり合い、多種多様な護符が作られてきました。
興味深いのは、その形です。
一見すると漢字のようですが、普通の文章として読む文字とはかなり違います。
線を複雑につないだもの、漢字を崩したようなもの、文字と絵の中間のようなものがあります。『天帝尊星霊符秘密集伝』にも、単純な札形だけでは説明できない実にさまざまな図像が登場します。
私が惹かれたのも、まさにこの部分でした。
意味を知らずに見ると抽象画や記号のようでもあり、古いロゴマークのようにも見えます。ところが説明を読むと、それぞれに求められる役割が与えられています。
人間関係、商売、家内安全、病気、災厄、旅行、勝負事など、その目的はかなり具体的です。
古い時代の人々が何を恐れ、何を願っていたのか。その一端が、霊符の名称からも見えてきます。

P116
形式から見ると漢字を伏線として、絵と神秘的な図案を加えたデザインシステムだ。

魅惑の漢字
2019年1月11日初版第1冊発行
著 者:陳楠
訳 者:水野衛子
発行所:株式会社 樹立社

『天帝尊星霊符秘密集伝 一名・国乃宝』とは

今回紹介するのは、
藤崎孝教 著
『天帝尊星霊符秘密集伝 : 一名・国乃宝』
天皇館、明治43年(1910)12月
です。
国立国会図書館デジタルコレクションで公開されており、現在はオンラインで閲覧することができます。
表紙を開くと序文や目録が続き、その後には霊符の図と、それに対応する秘法や使用法が掲載されています。
最初に登場するのは「貴人愛敬之御秘符」。
続いて「婚姻愛敬之御秘符」、さらに公訴、祈願、悪事を止めるもの、虫害、金銀、衣服・家具など、実に幅広い願いに対応した霊符が並んでいます。
現代のお守りにも「交通安全」「商売繁盛」「学業成就」など目的別のものがありますが、その発想をさらに細かく分けたようにも見えます。
人が生活していれば、仕事の悩みもあれば、人間関係の悩みもあります。病気も怖ければ、災害や盗難も怖い。
時代は変わっても、人が願うことには意外と変わらない部分があるのかもしれません。

文字なのか、絵なのか

この本で特に面白いのは、霊符の名称だけを読んでいると想像できないほど、図像の種類が豊富なことです。
たとえば初期のページだけを見ても、中央に顔のような形を持つもの、格子や小さな四角を組み合わせたもの、丸い点を連ねたものがあります。
八卦を思わせる線が描かれたものもあり、符の外周に細かな文字がびっしりと書き込まれたものもあります。
文字を「読む」というより、一枚の図として眺めたほうが面白いものが少なくありません。
こうしたものを見ると、古代文字や篆書、印章、家紋などを眺めるときと似た感覚になります。
内容を完全には理解できなくても、線の組み方や配置そのものに惹かれるのです。

霊符の名称から見える当時の暮らし

良縁を願うもの、人から好かれることを願うもの、訴訟や勝負に関係するもの、金銭や商売に関係するもの、病気や災難を遠ざけるもの。
現代でもお守りに願うような内容が並ぶ一方で、当時の生活環境を感じさせるものも含まれています。
一つ一つの霊符を単なる「不思議な図」として見るだけでなく、なぜこのような願いのための符が必要とされたのかと考えてみると、自然災害や病気など様々な原因がわからない事への昔の人々の不安や悩みなどがあったのかと思われます。まあ現代においても不安や悩みは尽きないですが、悪質なスピリチュアルビジネスに騙されないようにすることは大事です。

338の霊符を順番に紹介

『天帝尊星霊符秘密集伝 一名・国乃宝』には多数の霊符が収められています。
資料中には「339」との記載もありますが、実際に目録と本文を照らし合わせてみると、確認できた霊符は338点でした。見落としがあるかもしれませんが。
欠落している霊符があるのか、当時の編集・印刷上の誤りなのかは、今回確認した資料だけでは分かりません。そのため、ここでは実際に確認できた338点を番号順に紹介します。
漢字は、できるだけ資料に見られる旧字のままとしました。ふりがなについては読みやすいよう現代かなに改めています。
また、護符の名称には、目次に記された日本語読みと本文中の漢語的な名称との違い、表記の揺れや誤記と思われる箇所が見られます。そのため、原則として本文に記載された名称を優先しています。正確さを目指しましたが間違いがあるかもしれないことをご了承ください。

霊符はただ貼ったり持っているだけでは効果はありません。この本に書かれている正しい作法と精神統一をもって自ら書写し、魂を込める儀式を行うことで、本来の力が発揮されると言われています。

藤崎孝教 著『天帝尊星霊符秘密集伝 : 一名・国乃宝』,天皇館,明43.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/760924 (参照 2026-08-26)を基に図版のみを掲載しました。

構成・Chat GPT

001 貴人愛敬之御秘符(キニンアイキョウノゴヒフ)

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001 貴人愛敬之御秘符(キニンアイキョウノゴヒフ) 上司や師匠、目上の人からかわいがられ、引き立てを受けることを願う霊符です。仕事や組織の中で人間関係を良くし、出世や成功につながる縁を願うものです。